新型コロナウイルス感染症
による労働災害

医療従事者等の労働災害

医師、看護師、介護従事者等の医療従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合は、
業務外で感染したことが明らかな場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる。

医師
 医師が診察した患者に発熱等の症状がみられ、その患者は後日新型コロナウイルスに感染していたことが判明した。その後、医師は発熱等の症状が出現し、濃厚接触者としてPCR検査を行ったところ、新型コロナウイルス感染陽性と判定された。労働基準監督署における調査の結果、医師は、業務外で感染したことが明らかではなかったことから、支給決定された。
看護師
 日々多数の患者に対し、問診、採血等の看護業務に従事していたところ、頭痛、発熱等の症状が続き、PCR検査で新型コロナウイルス感染陽性と判定された。労働基準監督署における調査の結果、看護師は、業務外で感染したことが明らかではなかったことから、支給決定された。
介護職員
 訪問介護利用者宅で介護業務に従事していたところ、利用者に新型コロナウイルス感染が確認されたため、濃厚接触者としてPCR検査を受けた結果、新型コロナウイルス感染陽性と判定された。労働基準監督署における調査の結果、業務外で感染したことが明らかではなかったことから、支給決定された。
理学療法士
 病院のリハビリテーション科で業務に従事していたところ、院内で新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生し、複数の医師の感染が確認された。それらの医師と接触歴があった理学療法士にも、咳、発熱等の症状が出現し、PCR検査で新型コロナウイルス感染陽性と判定された。労働基準監督署における調査の結果、理学療法士は、業務外で感染したことが明らかではなかったことから、支給決定された。

医療従事者等以外
感染経路が特定された場合の事例

感染源が業務に内在していることが明らかな場合は、労災保険給付の対象となる。

飲食店店員
 店内での業務に従事していたが、新型コロナウイルス感染者が店舗に来店していたことが確認されたことから、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。
また、労働基準監督署における調査の結果、同時期に複数の同僚労働者の感染が確認され、クラスターが発生したと認められた。以上の経過から、新型コロナウイルスに感染しており、感染経路が特定され、感染源が業務に内在していたことが明らかであると判断されたことから、支給決定された。
建設作業員
 勤務中、同僚労働者と作業車に同乗していたところ、後日、作業車に同乗した同僚が新型コロナウイルスに感染していることが確認された。その後体調不良となり、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。
また、労働基準監督署における調査の結果、当該同僚以外の感染者との接触は確認されなかった。以上の経過から、新型コロナウイルスに感染しており、感染経路が特定され、感染源が業務に内在していたことが明らかであると判断されたことから、支給決定された。

医療従事者等以外
感染経路が特定されない場合の事例

感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる業務
(複数の感染者が確認された労働環境下での業務や顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務など)に従事し、
業務により感染した蓋然性が高いものと認められる場合は、労災保険給付の対象となる。

小売店販売員
 店頭での接客業務等に従事していたが、発熱、咳等の症状が出現したため、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。労働基準監督署において調査したところ、感染経路は特定されなかったが、発症前の14日間の業務内容については、日々数十人と接客し商品説明等を行っていたことが認められ、感染リスクが相対的に高いと考えられる業務に従事していたものと認められた。
一方、発症前14日間の私生活での外出は、日用品の買い物や散歩などで、私生活における感染のリスクは低いものと認められた。医学専門家からは、接客中の飛沫感染や接触感染が考えられるなど、当該販売員の感染は、業務により感染した蓋然性が高いものと認められるとの意見であった。
以上の経過から、新型コロナウイルスに感染しており、感染経路は特定されないが、従事した業務は、顧客との近接や接触が多い労働環境下での業務と認められ、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと判断されることから、支給決定された。